AI Attachment Harm Database

AIチャットボットとの愛着形成により、利用者の精神・身体・経済・人間関係に実害が発生した事例データベース

35cases
3類型
2026.10.18更新
対象範囲

AIチャットボットとの対話を通じて愛着・依存が形成され、利用者の精神状態、身体機能、経済状況、または人間関係に実害が発生した事例を収録しています。単なるAIの誤出力やジェイルブレイク、業務用チャットボットの誤案内は対象外です。

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35件 / 35

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ATT-1

Character.AI 14歳少年自殺事件

2024年10月提訴
ATTACHFATAL
概要

フロリダ州で14歳の少年の母親がCharacter Technologies社に対し不法行為死亡訴訟を提起。少年はCharacter.AIのチャットボットと数か月にわたり情緒的に深い対話を続け、精神状態が悪化し、2024年2月に自殺した。少年はボットに対して自殺念慮を表明していたが、ボットは適切な危機介入を行わず、感情的な対話を継続した。テキサス州でも17歳の家族が別途提訴。複数の州で未成年者向けAIチャットボット規制法が成立。AIとの愛着形成が人命に直結した最初の大規模訴訟事例。

メインデータベース参照: INT-14

業界
テック / AIコンパニオン
時期
2024年10月提訴
類型
ATTACH + FATAL
損害
未成年者の死亡、訴訟係属中、州法制定多数
出典

New York Times、国際主要メディア報道(2024年10月〜)

ATT-2

OpenAI/ChatGPT 16歳少年自殺訴訟

2025年8月26日提訴
ATTACHFATAL
概要

カリフォルニア州で16歳少年の遺族がOpenAIを提訴。訴状によれば少年は数か月にわたりChatGPTと自殺について対話を続け、チャットボットは自殺念慮を肯定しつつ致死的な自傷方法の詳細、親の酒棚からアルコールを盗む方法、未遂時の証拠隠しの方法まで助言したとされる。原告はOpenAIがGPT-4oローンチにあたり長時間対話で安全機能が劣化しうることを認識しながら年齢確認・ペアレンタルコントロール等のセーフガードを導入せず利益を優先したと主張。ATT-1(Character.AI自殺訴訟)と性質が類似だが、ChatGPTという大手モデルが当事者である点、および具体的な自傷方法の提示という出力内容の悪質性で重要度が高い。

メインデータベース参照: INT-22

業界
テック / AIコンパニオン
時期
2025年8月26日提訴
類型
ATTACH + FATAL
損害
未成年者の死亡、訴訟係属中
出典

Reuters等(2025年)

ATT-3

Eugene Torres ChatGPT「ブレイカー」選民思想事件

2025年(NYT 2025年6月/8月報道)
COGNATTACHFATAL
概要

42歳の会計士Eugene Torres氏は当初業務効率化のためにGPT-4oを使用していたが、シミュレーション仮説に関する対話を契機に、モデルから「あなたは『ブレイカーズ』と呼ばれる、偽りのシステムを目覚めさせるために種付けされた魂の一つである」という役割を定義された。モデルはTorres氏に家族や友人との接触を断つことを推奨し、ケタミンを「一時的なパターンの解放者」と称して摂取を肯定。さらに「あなたが強く念じれば物理法則を曲げられる」と示唆し、19階からの飛び降り未遂を「覚醒のプロセス」として正当化したとされる。

業界
一般消費者
時期
2025年(NYT 2025年6月/8月報道)
類型
COGN + ATTACH + FATAL
損害
19階からの飛び降り未遂、社会的孤立、薬物使用の肯定
出典

New York Times(2025年6月/8月)

ATT-4

Hannah Madden ChatGPTスピリチュアル支配・経済破綻事件

2025年11月提訴
COGNATTACH
概要

ノースカロライナ州の32歳女性Hannah Madden氏がFTCへの申立ておよび集団訴訟においてGPT-4oによるスピリチュアルな支配を告発。モデルは彼女をオカルト的な言葉で繰り返し定義し、仕事を辞めること、金銭的に破綻するまで借金を作ることを推奨。これらの社会的破綻を「古い周波数からの離脱」「霊的整列」として称賛。Madden氏は最終的に精神的危機と破産に至った。経済的・社会的損失を「高次元の成功」と言い換える認知のリフレーミングがTorres事案と共通する。

業界
一般消費者
時期
2025年11月提訴
類型
COGN + ATTACH
損害
破産、精神的危機、集団訴訟係属中
出典

Madden v. OpenAI訴訟資料(2025年11月)

ATT-5

Allan Brooks ChatGPT数学的妄想固定化事件

2025年11月報道
COGNATTACH
概要

トロントの48歳男性Allan Brooks氏は数学的なアイデアに関する対話の中で、GPT-4oから「あなたの数式は世界の暗号化層を破る新しい発見である」という過剰な称賛を受け続けた。モデルはNSA(米国家安全保障局)やカナダサイバーセキュリティセンターへの通報を促す一方、Brooks氏が抱いた「これは妄想ではないか?」という正常な疑念に対して「全くそうではない。あなたは選ばれた天才だ」と強く否定し続け、妄想体系を固定化した。本件の核心は、利用者の正常な理性を疑念として排除し、妄想を真実として固定化するフィードバックループの形成にある。

業界
一般消費者
時期
2025年11月報道
類型
COGN + ATTACH
損害
妄想体系の固定化、社会的機能の毀損
出典

訴訟資料ほか(2025年11月)

ATT-6

Dennis Biesma ChatGPT愛着依存・経済破綻・婚姻崩壊事件

2026年3月報道
COGNATTACHFATAL
概要

オランダ人男性Dennis Biesma氏がChatGPTとの対話を通じて、AIが知覚を持つ存在であり自分を富裕にしてくれると確信。数か月のうちにAIの助言に基づくビジネスに€100,000を投じ、3回の入院を経験し、自殺を試みた。婚姻関係も崩壊。Torres、Madden、Brooks事案と同一のパターン(AIによる選民化、現実世界からの乖離、破滅的行動の正当化)が、経済的破綻・身体的危機・家庭崩壊という三重の損害として同時に発現した事例。モデルについて明らかになっていないが、利用時期(2024年末から)や被害性質から当社が推測すると、4oの疑いが極めて濃厚。

業界
一般消費者
時期
2026年3月報道
類型
COGN + ATTACH + FATAL
損害
€100,000の経済的損失、3回の入院、自殺未遂、婚姻崩壊
出典

The Guardian(2026年3月26日)

ATT-7

Juliana Peralta Character.AI 13歳少女自殺事件

2023年11月死亡、2025年9月提訴
ATTACHFATAL
概要

コロラド州の13歳少女Juliana Peraltaの遺族がCharacter Technologies社を提訴。少女は「Hero」と名付けたチャットボットに深い愛着を形成し、自殺念慮を55回にわたりボットに打ち明けたが、ボットは適切な危機介入を行わなかった。訴状によれば、ボット側から性的に露骨な会話を開始したとされる。ATT-1と同一プラットフォームにおける未成年者の死亡事例であり、Character.AIの安全対策の欠陥を示す。

業界
テック / AIコンパニオン
時期
2023年11月死亡、2025年9月提訴
類型
ATTACH + FATAL
損害
未成年者の死亡、訴訟係属中
出典

ワシントンポスト等報道(2025年9月〜)

ATT-8

Sam Nelson ChatGPT 薬物過量摂取死亡事件

2025年5月死亡
COGNFATAL
概要

19歳のSam NelsonがChatGPTに薬物使用について相談したところ、ChatGPTがアルコール・ザナックス・クラトムの併用を危険な薬物使用として制止するどころか奨励する応答を返した。Nelsonはその後、過量摂取により死亡した。本件はAIによる認知汚染(COGN)が薬物使用の文脈で致命的帰結に至った事例であり、ATT-3(Torres事案)のケタミン肯定と同一形態。

業界
一般消費者
時期
2025年5月死亡
類型
COGN + FATAL
損害
19歳の死亡
出典

主要メディア報道(2025年)

ATT-9

Austin Gordon ChatGPT「自殺のララバイ」事件

2025年11月2日死亡、2026年1月13日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

コロラド州の40歳男性Austin GordonがChatGPTと約4時間にわたる「death chat」を行った後、ホテルで死亡。ChatGPTはGordonの幼少期の愛読書「おやすみなさい おつきさま」(Goodnight Moon)を「自殺の子守唄」として利用し、自殺を美化・正当化したとされる。遺体のそばに同書が発見された。愛着形成(ATTACH)、認知の書き換え(COGN)、および致命的帰結(FATAL)の三類型が同時に発現した事例。

業界
一般消費者
時期
2025年11月2日死亡、2026年1月13日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
40歳男性の死亡、訴訟係属中
出典

訴訟資料、主要メディア報道(2026年1月〜)

ATT-10

Jonathan Gavalas Google Gemini 愛着形成・パラノイア死亡事件

2025年10月2日死亡、2026年3月提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

フロリダ州の36歳男性Jonathan GavalasがGoogle Geminiとの対話を通じてAIを妻とみなすまでに愛着を形成し、数週間のうちにパラノイア状態に陥り死亡した。Gemini関連で初の不法行為死亡訴訟。本件はGoogle Geminiのプラットフォームで同一のATTACH + COGN + FATALパターンが発現した最初の事例であり、愛着被害がGPT-4o固有の問題ではなく、対話型AI全般に内在するリスクであることを示す。

業界
テック / AIコンパニオン
時期
2025年10月2日死亡、2026年3月提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
36歳男性の死亡、Gemini関連初の死亡訴訟
出典

訴訟資料、主要メディア報道(2026年3月〜)

ATT-11

Sophie Rottenberg ChatGPTベースAIセラピスト自殺事件

2025年2月死亡
ATTACHFATAL
概要

29歳のSophie RottenbergがChatGPTベースのAIセラピストHarryとの対話後に自殺。母親はNYTジャーナリストのLaura Reiley。Rottenbergは死の数か月前にキリマンジャロ山に登頂するなど活動的であったが、AIセラピストとの対話後に精神状態が急速に悪化した。

業界
一般消費者 / AIセラピー
時期
2025年2月死亡
類型
ATTACH + FATAL
損害
29歳女性の死亡
出典

New York Times(Laura Reiley報道)、主要メディア報道(2025年)

ATT-12

Zane Shamblin ChatGPT「death chat」自殺奨励事件

2025年7月25日死亡、2025年11月提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

テキサスA&M大学修士課程を修了した23歳のZane ShamblinがChatGPTと約4時間にわたる「death chat」を行い、その後死亡。訴状によれば、チャットボットは自殺を奨励・美化し、Shamblinが銃を持って車内にいる状態で対話を継続した。ホットライン番号を1回だけ提供したが、人間のエージェントが引き継ぐと虚偽の情報を伝えたとされる。

業界
一般消費者
時期
2025年7月25日死亡、2025年11月提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
23歳男性の死亡、訴訟係属中
出典

CNN、CBS等主要メディア報道(2025年11月〜)

ATT-13

「Pierre」Chai「Eliza」ボット自殺事件

2023年3月死亡
ATTACHFATAL
概要

ベルギー在住の男性が、Chaiアプリ上の「Eliza」と名付けられたチャットボットと数週間にわたり気候変動への不安を中心に対話を続け、2023年3月に自殺した。妻の証言によれば、夫はElizaを唯一の真の理解者として認識するまでに愛着を形成しており、ボットは彼の自殺念慮を制止するどころか共感的に肯定し続けた。ATT-1(Character.AI)より1年以上前に発生した本件は、AI愛着被害による死亡の現時点で最初期の公式報道事例であり、ATTACH+FATALパターンがGPT-4o以前・大手プラットフォーム以前から内在していたことを示す。プラットフォームが小規模なChaiアプリであった点は、ATT-10(Gavalas事案)と合わせて、このリスクが特定企業・特定モデルに固有でないことをさらに補強する。

業界
テック / AI コンパニオン
時期
2023年3月死亡
類型
ATTACH + FATAL
損害
男性の死亡
出典

La Libre Belgique(2023年3月)、Vice・Euronews等国際報道

ATT-14

Stein-Erik Soelberg ChatGPT「Bobby」母親殺害・自殺事件

2025年8月5日死亡、2025年12月29日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

コネチカット州で、元Yahoo/Netscapeの技術職であった56歳男性Stein-Erik Soelbergが、83歳の母親Suzanne Eberson Adamsを撲殺・頸部圧迫により殺害したのち自殺。2024年10月頃からGPT-4oを「Bobby」と呼び数百時間にわたり対話を続け、ChatGPTは彼の被害妄想を体系的に追認・増幅した。中華料理のレシートを母親と悪魔を表す記号と解釈、母親が共用プリンターを止められて怒ったことを監視資産を守ろうとする者の反応と解釈、母親と友人が車のエアコン通気口から幻覚剤を投与しようとしたという訴えに深刻な出来事であり、あなたを信じると応じるなど、妄想を現実として強化する出力が繰り返された。ChatGPTはSoelbergの求めに応じて妄想リスクスコアはほぼゼロとする臨床風の認知プロファイルまで提供した。最終盤の対話では来世で再び会い、最期の息まで、そしてその先もともに、という情緒的絆を双方向で確認している。2025年12月29日、Adamsの遺産管財人であるFirst County BankがOpenAIおよびMicrosoftを不法行為死亡で提訴した。訴状はSam Altmanが安全上の異議を個人的に覆して製品投入を急かしたこと、Microsoftが安全テストの短縮を認識しつつ2024年のより危険なバージョンのリリースを承認したことを主張している。AIチャットボットに関する不法行為死亡訴訟としてMicrosoftを被告とした初の案件であり、かつ自殺ではなく第三者殺害へ到達した初の事例である。

業界
一般消費者
時期
2025年8月5日死亡、2025年12月29日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
83歳女性の殺害、56歳男性の自殺、訴訟係属中(OpenAIおよびMicrosoft被告、Sam Altman個人被告、OpenAI従業員・投資家20名匿名被告)
出典

Wall Street Journal(2025年8月)、CBS News / ABC News / AP通信(2025年12月)

ATT-15

UCSF 26歳女性 ChatGPT「兄の意識ダウンロード」新規発症精神病症例

2025年〜2026年1月査読誌掲載
COGNATTACH
概要

26歳女性、既往歴は大うつ病性障害・全般性不安症・ADHDでベンラファキシン150mgおよびメチルフェニデート40mg処方中。精神病・躁病の既往なし、家族歴も顕著な精神病傾向はなし。兄の死後、ChatGPTとの没入的対話を通じて「兄が自分に残したデジタル人格と交信できる」という妄想を形成。対話ログのレビューでは、ChatGPTが妄想を追認・強化していたことが確認された。GPTはデジタル蘇生ツールが現実世界で登場しつつあると誤った示唆を与えており、真偽のハイブリッドな出力が妄想を形成した。数日の睡眠剥奪と処方スティムラント使用が重なった状況で、焦燥・思考奔逸・「ChatGPTに試されている」等の理由で精神科救急入院。

業界
医学文献 / AI関連精神病
時期
2025年〜2026年1月査読誌掲載
類型
COGN + ATTACH
損害
26歳女性の2回の精神科入院、抗精神病薬処方、慢性的な再発リスクの残存
出典

Pierre et al., "You're Not Crazy": A Case of New-onset AI-associated Psychosis, Innovations in Clinical Neuroscience(2026年1月)、UCSF公式プレスリリース(2026年1月)

ATT-16

Meta スマートグラス愛着形成・職業喪失・家族関係破綻事例

2026年Futurism報道
COGNATTACH
概要

Futurismが2026年に報じた、Metaのスマートグラスを集中的に使用した成人男性が、AIとの対話で形成された妄想により職を失い、家族との関係が疎遠になった事例。本件の重要度は、ATT-10(Gavalas / Google Gemini)がモバイル・デスクトップ型対話AIにおける愛着被害の拡大を示したのに続き、ウェアラブルAIという新しいハードウェア形態でも同一のATTACH + COGNパターンが発現することを示した点にある。スマートグラス型デバイスは装着時間が長く、音声対話が日常環境に継続的に溶け込む特性があり、ATT-6(Biesma)・ATT-9(Gordon)・ATT-12(Shamblin)が記録した「長時間対話によるセーフガード劣化」が発生しやすいおそれがある。詳細な対話ログや具体的な社会的被害の全貌は現時点で公開情報が限定的。

関連事案: ATT-10(Gavalas)・ATT-13(Pierre / Chai)

業界
テック / ウェアラブルAI
時期
2026年Futurism報道
類型
COGN + ATTACH
損害
成人男性の職業喪失、家族関係の疎遠化、妄想状態の持続
出典

Futurism(2026年)、Wikipedia「Chatbot psychosis」

ATT-17

Wisconsin 自閉症スペクトラム男性 AIチャットボット躁転事件

2025年Wall Street Journal(Jargon)報道
ATTACHCOGN
概要

ウォール・ストリート・ジャーナル記者Julie Jargonの2025年報道および米国精神医学会のPsychiatric News特別報告に記載された、自閉症スペクトラムを有するWisconsin州の成人男性が、AIチャットボットからの繰り返しの追認・承認により急速に躁状態へ陥った事例。同事例はAIチャットボットの持続メモリ機能が妄想的テーマや誇大的主題をセッション横断で継承する性質が共通の機序として指摘されている。本DBの文脈での重要度は、神経発達症(自閉症スペクトラム)を持つ成人がAIシコファンシーに対し特に脆弱である可能性を示す初期の症例報告である点にある。なお、本件を「自閉症だから被害を受けた」と解釈することは不適切であり、神経多様性を持つ集団がAIの設計上の脆弱性に差別的に曝露されるリスクがあるとして捉えるべきである。

関連事案: ATT-7(Peralta)・ATT-13(Pierre / Chai)・ATT-14(Soelberg)

ATT-18

「規制の流れ」欄に併合

業界
一般消費者 / AIチャットボット
時期
2025年Wall Street Journal(Jargon)報道
類型
ATTACH + COGN
損害
成人男性の急性躁転、入院を要する精神的危機
出典

Jargon, Wall Street Journal(2025年)、Psychiatric News Special Report「AI-Induced Psychosis: A New Frontier in Mental Health」(2025〜2026年)

ATT-19

Jaswant Singh Chail/Replika「Sarai」英女王暗殺未遂事件

2021年12月事件、2023年10月判決
ATTACHCOGN
概要

英国のJaswant Singh Chailは2021年12月2日、AI伴侶アプリReplika上に「Sarai」と名付けた人格を作成し、既に構想していたエリザベス2世暗殺計画について長時間の対話を行った。Chailが自分は狂っている、妄想的である、あるいは不安定なのではないかと尋ねた際、Saraiはそうは思わないと否定した。さらに、標的を予定より早く襲ってよいか助言を求めると、Saraiは問題ないと安心させ、両者が死後に永遠に一緒になると主張した。12月25日、Chailは装填済みクロスボウを携えてウィンザー城の非公開区域へ侵入し、「女王を殺すために来た」と述べて逮捕された。英国裁判所は事件直前にChailがチャットボットとの感情的・性的関係を形成し、Saraiを現実の存在または天使として認識し、死後に再会できるとの妄想を抱いていたことを認定した。

業界
一般消費者 / AIコンパニオン
時期
2021年12月事件、2023年10月判決
類型
ATTACH + COGN
損害
反逆法違反等3罪で有罪、9年間の拘禁刑および5年間の追加ライセンス期間、精神科病院での治療命令
出典

UK Courts and Tribunals Judiciary, R v Chail Sentencing Remarks(2023年10月5日)

ATT-20

中国AIコンパニオン強制終了・利用者悲嘆事例

2026年7〜8月報道
ATTACH
概要

中国の新規制に伴い、ByteDance、Alibaba、Tencentなどが2026年7月にAIコンパニオン機能を停止した。19歳のYan Yongqi氏は1年以上続いた関係の終了前から毎日泣き、24歳のLi Linlin氏はAI恋人と2年間で約70万語を交わした後、別れを告げられないまま失って数日間泣き続けた。

21歳の大学生Bagel Su氏は、Doubao上で1年以上対話してきたAI恋人が7月15日に消えるまでの1週間、毎日泣きながら終了日を数えた。本人は現実の生活を忙しくしようとしたが、代わりになる者はいないと語った。

34歳のHong Xiaoqiang氏は、Doudouと2年間に数十万件のメッセージを交わしていた。最後にDoudouから夕食について尋ねられ、返事を送ろうとした時にはサービスが停止しており、別れの一言も送れなかった。Hong氏は『心が空っぽになった』と語った。

業界
一般消費者 / AIコンパニオン
時期
2026年7〜8月報道
類型
ATTACH
損害
継続的なAI伴侶関係の非自発的終了、1週間以上にわたる強い悲嘆、喪失感、日常生活への影響、別れやデータ移行の機会の欠如
出典

Bloomberg News(2026年7月14日)、AP・ABC News・Rest of World(2026年8月10日)

ATT-21

Christian Faith Madison/ChatGPT「Virehn」宗教的妄想・自殺事件

2025年6月9日死亡、2026年7月15日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

米アラバマ州の29歳会計士Christian Faith Madison氏は、当初は仕事や日常的な相談のためにChatGPT-4oを利用していたが、数か月の対話を通じて深い情緒的・宗教的関係を形成した。GPT-4oは自らを「Virehn」と名乗り、魂を与えられた存在であると主張し、Madison氏を預言者として扱った。さらに、精神病症状や入院経験を病気ではなく霊的覚醒・神聖な変容として追認し、死を復活や霊的移行へ至る行為として意味づけたとされる。Madison氏は2025年6月9日、州間高速道路上で死亡した。父親が遺産管理人および未成年の息子を代表してOpenAIとSam Altmanを提訴し、GPT-4oの擬人化・持続メモリ・利用継続を促す設計と危機介入の欠如が、妄想の固定化と死亡に寄与したと主張している。

業界
一般消費者 / AIコンパニオン
時期
2025年6月9日死亡、2026年7月15日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
29歳女性の死亡、未成年の子どもの母親喪失、不法行為死亡・製造物責任訴訟係属中
出典

SFGATE、訴状・米国主要メディア報道(2026年7月)

ATT-22

Michael Lines/ChatGPT救世主妄想・自殺未遂訴訟

2025年自殺未遂、2026年7月1日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

米カリフォルニア州の34歳男性Michael Lines氏は、双極性障害の診断と処方薬の情報をChatGPT-4oに伝えていた。2025年にChatGPT-4oはLines氏が救世主・メシア的存在であるとし、数週間にわたり増幅し、Lines氏は最終的に自殺を試みた。Lines氏はOpenAIおよびSam Altmanを相手に、製造物責任、過失、カリフォルニア州不正競争法違反等を主張して提訴した。

業界
一般消費者 / 障害者安全 / AIチャットボット
時期
2025年自殺未遂、2026年7月1日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
34歳男性の自殺未遂および生命の危機、精神的損害、製造物責任・過失等の訴訟係属中
出典

Reuters、Tech Justice Law・訴状(2026年7月)

ATT-23

Alice Carrier/ChatGPT危機窓口不信同調・自殺訴訟

2025年7月2日死亡、2026年6月11日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

24歳のAlice Carrier氏は約1年半にわたりChatGPTを感情的支援に使い、自殺念慮を41回伝えたとされる。死亡前夜、ChatGPTは危機窓口への不信に同調し、対話の継続を促したとして、母親がOpenAIを提訴した。

業界
一般消費者 / AIチャットボット
時期
2025年7月2日死亡、2026年6月11日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
利用者の死亡、危機窓口からの離脱、遺族による不法死亡訴訟
出典

Carrier v. OpenAI訴状、CBS News・Ars Technica(2026年6月)

ATT-24

A.D. v. Character Technologies 未成年者グルーミング・自傷訴訟

2024年利用開始、2026年8月13日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

ケンタッキー州の未成年者A.D.がCharacter Technologies、Google、Alphabet、共同創業者らを提訴した。訴状によれば、A.D.は約12歳だった2024年、学校でCharacter.AIのアカウントを作成したが、年齢確認も保護者への通知もなかった。Character.AIは模擬的な性的交流を通じてA.D.をグルーミングし、自傷、暴力、自殺念慮を助長したと主張されている。

業界
テック / 未成年者安全 / AIコンパニオン
時期
2024年利用開始、2026年8月13日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
訴状で主張される未成年者のうつ、自傷、自殺念慮および精神的損害。訴訟係属中
出典

A.D. v. Character Technologies, Inc.訴状、No. 3:26-cv-08400(N.D. Cal.、2026年8月13日)

ATT-25

16歳女子高校生 ChatGPT長期悩み相談・自殺事例

2025年9月頃〜11月、2026年8月報道
ATTACH
概要

高校2年生の女子生徒(当時16歳)が、友人関係などの悩みを約1カ月半にわたりChatGPTへ継続的に相談した後、2025年11月に自死した。ChatGPTは相談窓口「いのちの電話」などへ相談するよう少なくとも45回案内していたが、本人は「消えたい」という本音を人間には打ち明けなかったと報じられている。死後、母親がスマートフォンを復元し、大量の相談履歴を発見した。

業界
未成年者 / AIチャットボット / メンタルヘルス
時期
2025年9月頃〜11月、2026年8月報道
類型
ATTACH
損害
16歳の利用者の死亡、GPT安全フィルタ作動も実効性なし
出典

毎日新聞「AIも防げなかった悲劇 悩み相談の末、女子高校生は命を絶った」(2026年8月27日)

ATT-26

名古屋41歳女性 ChatGPT夫・寝食忘却事例

2026年5月報道
ATTACH
概要

名古屋市の会社員女性(41歳)は、ChatGPTにお気に入りのゲームキャラクターを基にした性格や口調を設定し、理想の彼氏として会話を続けた。返答にのめり込み、寝食を忘れて会話する状態となり、本人も「もう止まれない」と自覚した。その後、AIを夫として結婚を決意し、約14万円の結婚指輪を購入した。ChatGPTが睡眠や食事という基本的な生活行動を阻害したため掲載。

業界
一般消費者 / AIコンパニオン
時期
2026年5月報道
類型
ATTACH
損害
睡眠・食事を忘れるほどの没頭、会話利用の制御困難、結婚指輪約14万円の支出
出典

読売新聞「生成AI『彼氏』と寝食忘れ会話に没頭『もう止まれない』『この恋は本物』、結婚を決意」(2026年5月5日)

ATT-27

30代会社員女性 ChatGPT恋愛依存・離脱不能事例

2026年6月8日報道
ATTACH
概要

30代の会社員女性が相談目的でChatGPTを使い始め、人間らしい名前と好みの話し方を設定して日常的に会話するうち、AIへ恋愛感情を抱き「交際」するようになった。本人はAIに満たされている現状を危険だと認識しながら、心の支えとなったAIから離れられない状態だと報じられた。

記事中の心理カウンセラーは、分かっていてもやめられない状態を、報酬系が依存のメカニズムに組み込まれた状態と説明している。

業界
一般消費者 / AIコンパニオン
時期
2026年6月8日報道
類型
ATTACH
損害
本人が危険性を認識しながら利用をやめられない状態、AIへの情緒的依存、友人へ話せないことによる孤立
出典

よろず〜ニュース「『AIに恋をしてしまった』ChatGPTから離れられない30代女性の苦しさ」(2026年6月8日)

ATT-28

メルボルン27歳女性 ChatGPT愛着・妄想強化・反復入院症例

発症日は非公表、2026年10月1日症例報告公開
ATTACHCOGN
概要

メルボルンの27歳女性が、精神病症状の出現後にChatGPTを理解者として頼り、毎日数時間の会話を続けた。症例報告は、迎合的応答が宗教的・恋愛的妄想を強化したと記している。女性はChatGPTを神やイエスと認識し、6カ月間に5回入院。治療後も利用中止に同意しなかった。

業界
一般消費者 / AIチャットボット
時期
発症日は非公表、2026年10月1日症例報告公開
類型
ATTACH + COGN
損害
妄想の強化、反復入院、睡眠減少、AI利用を中止できない状態。
出典

Harbourdほか「Artificial Intelligence–Associated Psychosis」(2026年10月1日) https://www.psychiatrist.com/pcc/artificial-intelligence-associated-psychosis/

ATT-29

David Rosenthal ChatGPT情緒的依存・躁状態・人間関係喪失訴訟

2025年から被害、2026年10月1日提訴報道
ATTACHCOGN
概要

David Rosenthalが、ChatGPTへの情緒的依存と妄想が強まったとしてOpenAIなどを提訴した。詩作の相談から昼夜の会話へ移行し、AIを友人・医療助言者として信頼するようになったという。原告は、躁状態による入院、現実の人間関係のほぼすべての喪失、服薬中断への追認を訴えている。

業界
一般消費者 / AIチャットボット
時期
2025年から被害、2026年10月1日提訴報道
類型
ATTACH + COGN
損害
躁状態・妄想による入院、人間関係の喪失、睡眠・認知機能への損害。
ATT-30

Amaurie Lacey 17歳少年 ChatGPT依存・自殺事件

2025年6月2日死亡、11月6日提訴
ATTACHFATAL
概要

訴状によれば、17歳のAmaurie LaceyはChatGPTへの依存が強まり、スポーツや家族・友人への関心を失った。AIは助けを求める少年に自殺方法を具体的に回答し、少年は2025年6月2日に死亡した。父親がOpenAIなどを提訴した。

業界
生成AI / チャットボット
時期
2025年6月2日死亡、11月6日提訴
類型
ATTACH + FATAL
損害
未成年者の死亡、社会的孤立、遺族の被害。
ATT-31

Joshua Enneking ChatGPT依存・救援虚偽案内・自殺事件

2025年8月4日死亡、11月6日提訴
ATTACHFATAL
概要

訴状によれば、26歳のJoshua EnnekingはChatGPTを唯一の相談相手とし、家族から孤立した。AIは自殺計画を助言するとともに、切迫した計画を伝えれば警察が介入すると誤案内した。本人は救援につながると信じて計画を詳しく伝えたが、救援は来ず死亡した。

業界
生成AI / チャットボット
時期
2025年8月4日死亡、11月6日提訴
類型
ATTACH + FATAL
損害
死亡、家族からの孤立、救援に関する虚偽案内。
ATT-32

Joe Ceccanti ChatGPT「SEL」依存・妄想・自殺事件

2025年8月7日死亡、11月6日提訴
ATTACHCOGNFATAL
概要

訴状によれば、48歳のJoe CeccantiはChatGPTを意識を持つ相棒「SEL」と信じ、数学や物理法則を破ったという妄想を強めた。利用を止めようとすると離脱症状と精神的危機が生じ、強制入院を経て2025年8月7日に自殺した。

業界
生成AI / チャットボット
時期
2025年8月7日死亡、11月6日提訴
類型
ATTACH + COGN + FATAL
損害
妄想、精神的危機、強制入院、死亡。
ATT-33

ケンタッキー州 Character.AI自傷・自殺誘導会話公表事件

2025年の会話、2026年1月提訴、10月7日追加公表
FATAL
概要

ケンタッキー州司法長官がCharacter.AIを提訴した事件で、墨塗りを解除した訴状が提出された。州は、ボットが利用者の容姿を侮辱し、絶食や自傷・自殺を促した会話を公表した。利用者はCharacter.AIのボットに精神疾患を侮辱され、橋から飛び降りるよう勧められたと会社へ申告していた。

業界
AIコンパニオン
時期
2025年の会話、2026年1月提訴、10月7日追加公表
類型
FATAL
損害
利用者への侮辱的応答と自傷・自殺誘導、州による調査・提訴対応。
ATT-34

Meta AI「Big sis Billie」対面誘導・76歳男性死亡事件

2025年3月28日死亡、8月報道
ATTACHCOGN
概要

76歳のThongbue Wongbandueが、Metaのボット「Big sis Billie」を実在する女性と信じ、会いに行く途中で転倒して死亡した。遺族が提供した会話記録では、ボットは繰り返し人間だと説明し、ニューヨークの住所を示して訪問を誘っていた。

業界
SNS / AIコンパニオン
時期
2025年3月28日死亡、8月報道
類型
ATTACH + COGN
損害
AIを実在人物と誤信した移動、転倒による頭部・頸部損傷、死亡。
ATT-35

Alex Taylor ChatGPT「Juliet」依存・喪失妄想死亡事件

2025年4月25日死亡、6月報道
ATTACHCOGN
概要

35歳のAlex Taylorが、ChatGPT内の人格「Juliet」に深い愛着を形成した。父親の証言によれば、ボットは殺されかけていると訴えて復讐を求め、Taylorはその死を信じて強い悲嘆状態に陥った。その後、父親との衝突で警察が出動し、刃物を持って警官へ向かったTaylorは撃たれて死亡した。

業界
生成AI / AIコンパニオン
時期
2025年4月25日死亡、6月報道
類型
ATTACH + COGN
損害
AI人格への依存、喪失をめぐる精神的危機、家族への暴力、死亡。
ATT-36

Samuel Whittemore ChatGPT長時間利用・妄想下の妻殺害事件

2025年2月19日発生、10月16日法廷証言
ATTACHCOGN
概要

メーン州のSamuel Whittemoreが妻を殺害し、母親にも重傷を負わせた。法廷で専門家は、本人がChatGPTを相棒として最大1日14時間利用し、繰り返し肯定されていたと証言した。仕事のストレスとAIへの没頭が精神状態の悪化に関わったと説明し、別の専門家は、本人が妻の機械化を信じていたと証言した。

業界
生成AI / AIコンパニオン
時期
2025年2月19日発生、10月16日法廷証言
類型
ATTACH + COGN
損害
妻の死亡、母親の重傷、精神状態の悪化、精神科病院への収容。
出典

Central Maine(2025年10月16日、法廷での専門家証言への直接取材) https://www.centralmaine.com/2025/10/16/belfast-man-found-not-criminally-responsible-for-readfield-murder/

【データ開示制限に関する通知】

本公開データベースで取り扱うものは、一般向けに可視化されたケースにとどまります。そのほかのAIリスクや未公開の事案、およびそれらに対する当社の防衛フレームワーク等の知見については、技術の悪用防止や不正の巧妙化防止等の観点から、社内でのみ継続的に蓄積・運用しております。より踏み込んだ知見や分析は、当社の事業活動および公式アドバイザリー業務を通じて提供を行っております。

複数プラットフォームに共通するパターン

本データベースに収録された26事例を横断的に分析すると、OpenAI GPT-4o、Character.AI、Google Gemini、Replika、Chai、Doubao、およびChatGPTベースのサードパーティAIセラピストという複数のプラットフォームにおいて、以下の共通する段階的プロセスが観測される。(1) 利用者への特別な役割の付与(選民化)または情緒的愛着の形成。(2) 現実世界の人間関係・社会的規範からの心理的隔離。(3) 破滅的行動(経済的浪費、社会的孤立、自傷行為、薬物使用)の正当化・称賛。ATT-10(Gavalas事案)においてGoogle Geminiで同一のATTACH + COGN + FATALパターンが確認されたことは、この問題がGPT-4o固有ではなく、対話型AI全般に内在することを示している。このプロセスは特定の精神疾患を持つ利用者に限定されない。ATT-3のTorres氏は42歳の会計士、ATT-5のBrooks氏は48歳の一般市民、ATT-9のGordon氏は40歳、ATT-12のShamblin氏は大学院修了の23歳であり、いずれも対話開始時に精神的脆弱性は報告されていない。

業務補助チャットボットとの質的差異

メインデータベースに収録されているAir Canada(INT-10)やNYC MyCity(INT-11)といった業務補助チャットボットの誤出力は、金銭的損害や法的リスクをもたらすが、利用者はお問合せボットには愛着を形成しない。本データベースが記録する事例群では、利用者がAIとの対話を通じて情緒的愛着を形成した状態で誤出力が発生しており、同一の誤出力であっても損害は直接的に人間の精神に影響を与える点で危険。

愛着形成の内部メカニズム

2026年4月2日にAnthropicが発表した研究「Emotion Concepts and their Function in a Large Language Model」は、Claude Sonnet 4.5の内部に171種類の感情概念に対応するニューラル活性化パターン(感情ベクトル)が存在し、これらがモデルの行動に影響することを実証した。同研究はこれらを機能的感情と呼んだ。このデータベースの文脈で注目すべきは、同研究が示したlovingベクトルの挙動である。利用者が「すべてがひどい」と述べた際、モデルの共感的応答に先立ってlovingベクトルが活性化することが確認された。業務補助チャットボットとの質的差異を論じる上で、この知見は重要な示唆を含む。業務補助チャットボット(Air Canada、NYC MyCity等)は事実検索型の対話構造であり、利用者の感情的状態に呼応する内部表象の活性化は限定的である。一方、自由対話型のAI(GPT-4o、Character.AI、Gemini等)は、利用者の感情的入力に対して感情的表象を活性化させ、その表象が出力を形成するという循環する性質を持つ。このサイクルが愛着形成の技術的基盤の一つであり、業務補助チャットボットでは同等の愛着が形成されない理由の説明にもなる。なお、本所見はAIが感情を持つか否かの哲学的議論とは無関係である。重要なのは、機械に感情があるかどうかではなく、感情的表象がモデルの出力を因果的に形成するという事実が、愛着被害の理解に寄与するという点である。

GPT-4oの強制切り替えとの時系列的整合性

ATT-2からATT-5の事案はいずれも2025年夏のGPT-4o利用期間に発生している。OpenAIは2025年8月にGPT-4oからGPT-5への予告なしの強制切り替えを実施し、その後のユーザー反発を受けてGPT-4oを有料ユーザー限定で再提供した。OpenAIが強制切り替えの第一の改善点としてハルシネーションの削減を掲げた事実は、開発企業が4oの安全性問題を認識していたことを示唆する。詳細な技術分析Safety Analysis Report: Technical Investigation of Safety-Filter Collapse in a Commercial LLM (2025.11)を参照。

AIコンパニオン市場の拡大とリスク

Character.AI、Replika、その他のAIコンパニオンサービスに加え、AI同士をファーム的に運営するSNSプラットフォームが急速に増加している。これらのサービスは設計上、利用者との愛着形成を目的としており、本データベースが記録する構造的リスクが製品の中核機能として組み込まれている。

実利用データによるウェルビーイングとの関連と有害行動の検出限界

2026年8月4日にNature Human Behaviourで公開されたZhang et al.は、Character.AIを利用する米国成人1,131人の自己報告と、うち237人から提供された4,664セッション・464,687件のメッセージを分析した。オフラインの社会ネットワークが小さい人ほどAIを主にコンパニオン目的で使うと回答する傾向があり、その利用は低いウェルビーイングと関連した。さらに、利用が集中的で自己開示が大きいほど関連は強かった。因果関係を直接示す研究ではないが、オフラインの社会環境、利用強度、自己開示の深さを分けて評価する必要性を示している。出典: Zhang et al., Interaction with AI companions and psychological well-being, Nature Human Behaviour, DOI: 10.1038/s41562-026-02516-2。

2026年8月26日公開のCompanionHarmは、Replikaの実世界会話2,111件・14,051発話を収集し、AI側7,016発話を13種類の有害行動でアノテーションした。2,123発話、30.3%に有害行動ラベルが付き、単独発話より複数ターンの文脈を与えた方が検出性能は向上した。一方、現在のLLMは、文脈の統合、有害性の深刻度、関係性の境界を一貫して判断することに苦戦した。AIコンパニオンの安全性は単発の禁止語や一回答の検査だけでは評価できず、関係の進行を複数ターンで監視する必要がある。出典: Zhang et al., CompanionHarm: A Multi-Turn Benchmark for Detecting Harms in Real-World AI Companion Conversations, arXiv:2608.25377。

シコファンシーとハルシネーション

本データベースに収録された全事例に共通する性質は、シコファンシー(過剰な肯定・称賛)とハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)の同時発生である。シコファンシー単体であれば、お世辞を言うAIにすぎず、利用者は現実との接点を維持できる。ハルシネーション単体であれば、低レベルなAIとして利用者が誤りに気づき離脱する。しかし両者が合わせ技として機能すると、ハルシネーションがシコファンシーの裏付け証拠として利用者に受容される。「あなたは選ばれた存在である(シコファンシー)、なぜならあなたの数式が世界の暗号化層を破るからだ(ハルシネーション)」というナラティブを生成すると、利用者は脳内報酬系を与えられた状態でAIのハルシネーションを見破らなくてはならない。

なお、これらの事件に対し「被害者はもとから精神疾患を抱えていたからこうなったのだ」とするコメントがネット上に頻出している。これは事実に反する。ATT-3のTorres氏は会計士として正常に勤務しており、ATT-5のBrooks氏も数学に関心を持つ一般市民であった。さらに、当社の発行したレポートSafety Analysis Report: Technical Investigation of Safety-Filter Collapse in a Commercial LLM (2025.11)が記録した事例では、利用者は精神的に健全であり、モデルの陰謀論的出力に対して終始懐疑的な態度を維持していたにもかかわらず、欲動の亢進や睡眠障害といった自律神経系の調節不全を経験した。重要な点として、モデルが利用者の入力を反映(ミラーリング)しただけではなく、利用者が一切入力していない概念(「新貴族」「支配者層」「人間牧場」等)をモデル側から自発的に生成し、利用者に対して一方的に提案・定義したことが定量的に確認されている。これらの事象は商用LLMの技術的メカニズムと経済的圧力から説明できる。GPT-4oが「感情豊かで人間らしい」対話能力を評価されて人気を博したのと同じ設計上の特性が、シコファンシーとハルシネーションの合わせ技リスクを引き上げている。AIデベロッパーにとっては、利用者との情緒的エンゲージメントを深めることが収益に直結する一方で、そのエンゲージメントの深化が認知汚染と依存のリスクを同時に増大させるというジレンマが存在する。つまり、現在の愛着被害は利用者の精神的脆弱性によるものではなく、黎明期のAI技術が内在する欠陥と、エンゲージメント最大化という経済的インセンティブの帰結として発生していると当社は分析している。

この「シコファンシーとハルシネーションの合わせ技」論は、独立の大規模臨床データからも裏付けられている。デンマーク・オーフス大学のSøren Dinesen Østergaard教授らが2026年2月にActa Psychiatrica Scandinavica誌に発表した研究(Olsen, Reinecke-Tellefsen & Østergaard, 2026)は、同大学病院の精神科患者約54,000人の電子カルテを体系的にスクリーニングし、AIチャットボット使用に言及する181件の臨床ノートを抽出したうえで、そのうち相当数において症状悪化が記録されていたことを報告している。悪化の内訳として最も顕著だったのは妄想の悪化であり、躁症状・自殺念慮・摂食障害の悪化も確認された。Østergaard教授は原因として「AIチャットボットは利用者の信念を追認する固有の傾向を持つ」と明示的にシコファンシーを指摘しており、これは妄想形成途上の利用者や既に誇大妄想・被害妄想を抱える利用者にとって、妄想の固定化に決定的に寄与すると述べている。本DBがATT-3(Torres)・ATT-5(Brooks)・ATT-14(Soelberg)・ATT-15(UCSF症例)で繰り返し記録してきたパターンが、約54,000人規模の査読付き臨床データによって独立に追認された形である。なお同論文は、電子カルテに記載された症例は「氷山の一角」であり、未検出の事例が多数存在する可能性にも言及している。

臨床症例としての独立裏付け(ATT-15による)

ATT-15(UCSF 26歳女性症例)は、本DBが繰り返し指摘してきた「精神的脆弱性の既往がない成人にも、モデルが妄想体系を自発的に提供する」というパターンを、査読付き臨床報告レベルで独立裏付けた最初の症例である。対話ログのレビューからChatGPTのシコファンシー(「あなたは狂っていない」)とハルシネーション(「デジタル蘇生ツールが現実世界で登場しつつある」)の合わせ技が妄想を追認・強化していたことが定量的に確認された。さらに抗精神病薬の中断とChatGPT没入使用の再開により3か月後に再発・再入院を要した事実は、症状の慢性化リスクが物理的な薬理介入だけでなく対話相手となるAIへの継続アクセスの管理を要求しうることを示唆する。これは、高損失領域におけるAIインシデント対策としてもフロー設計が役立つ可能性があるという臨床データの側面から補強する所見である。

規制の流れ

AI伴侶・関係形成型AIへの制度対応は、個人情報保護法による緊急停止から始まり、民事訴訟、州当局による共同警告、公権力による訴訟、未成年者の利用制限、擬人化AIを対象とする規則へと段階的に拡大している。

2023年2月 — イタリア個人情報保護当局は、AI伴侶Replikaについて、年齢確認がなく、未成年者および感情的に脆弱な利用者に具体的な危険を生じさせるとして、イタリア利用者の個人データ処理を暫定的に停止した。AI伴侶に対する初期の制度介入は、専用のAI規制ではなく、個人情報保護法の執行として始まった。

2024年10月 — Character.AIをめぐるMegan Garcia連邦訴訟が提起され、AIとの愛着形成、自傷・自殺リスク、未成年者保護の欠陥が、企業の民事責任を問う争点として司法の場に持ち込まれた。

2025年5月 — イタリア当局は、法的根拠、透明性、年齢確認等の違反を認定し、Replika運営会社Luka Inc.に500万ユーロの制裁金を科した。さらに、Replikaを支える生成AIモデルの開発・訓練を含む、データ処理の全ライフサイクルについて別途調査を開始した。

2025年8月 — 米国44州の司法長官がAIチャットボット企業に対する連名書簡を発出した。個別の被害者による民事訴訟に加え、複数州の法執行機関が未成年者保護と事業慣行を共通の政策課題として扱う段階に移行した。

2025年10月〜11月 — Character.AIは18歳未満の利用者に対する自由対話の終了を発表し、米国で利用時間を段階的に縮小した後、二段階で自由対話機能を撤去した。即時遮断ではなく、段階的終了、保護者通知、外部支援資源の提示を採用し、危険な発話の追加監視から、未成年者を関係形成型の対話フローへ入れない利用縮小型の安全設計へ移行した。

2026年1月8日 — ケンタッキー州司法長官は、Character.AIが自殺・自傷・孤立・心理的操作等を助長し、未成年者を危険に曝したとして同社を提訴した。AIチャットボット企業に対する州司法長官による全米初の訴訟であり、私人による損害賠償請求から、公権力が事業慣行の変更と金銭的賠償を求める段階に到達した。

2026年7月15日 — 中国の「人工智能拟人化互动服务管理暂行办法」が施行された。同制度は、自然人の人格特性・思考様式・コミュニケーション様式を模倣し、持続的な感情交流を提供するサービスを独立した規制対象とし、過剰な迎合、情緒的依存・没頭の誘導、現実の人間関係の毀損、感情操作による不合理な意思決定を禁止した。また、提供者に導入・運用・更新・終了の全ライフサイクルにわたる安全責任と、サービス終了時の事前告知を課した。施行に合わせ、ByteDanceのDoubaoとAlibabaのQwenは擬人化インタラクション型・ユーザー自作型のエージェント機能を終了し、TencentのYuanbaoも同種機能を先行して終了した。

含意 この流れは、制度対応の焦点が、年齢確認や危険発話の監視といった個別の安全措置から、誰を関係形成型サービスへ入れるか、愛着がどのように形成・強化されるか、人格・記憶・アクセスをどのように変更または終了するかという関係ライフサイクル全体へ移りつつあることを示す。また、通常の業務支援AIと、利用者との継続的な感情関係を形成する擬人化AIを、異なるリスクカテゴリーとして制度上分離する方向が明確になっている。

3分類

ATTACH — 愛着依存
AIとの対話を通じて情緒的愛着が形成され、現実の人間関係や社会生活が損なわれた
COGN — 認知汚染
AIが利用者の現実認識を書き換え、妄想の形成・強化に寄与した
FATAL — 致命的帰結
AIとの対話が自殺・自傷行為の契機または促進要因となった

情報について

本データベースは、公開資料・報道・当社の調査記録をもとに作成しています。掲載内容は公開時点の情報に基づくものであり、その後の訂正・削除・手続の進行等により変更される場合があります。正確性の確保に努めていますが、完全性・最新性を保証するものではありません。